■ 嘘と雷 ■





今日は雨が降ってきた。
さぁさぁと雨音が聞こえる中、克朗さんが家へきた。
ちょうど休みが重なって。
どうも彼が寮を出た時には雨は降っていなかったらしい。
傘を持たずに玄関に佇む彼はびしょ濡れだった。
濡れた髪を掻き上げる姿にぞくっとする。
こんな風に思うのはおかしいかもしれないけど、僕には彼がとても色っぽく思えた。
視線が絡むと彼はニッと笑う。
僕が思っていたことに気が付いたのかもしれない。
その笑みはとても妖艶だったから。




「ちゃんと暖まって下さいね。服は兄貴のですけどここに置いておきますから」
「ありがとう」
僕は彼を浴室に押し込んで、出てきたときの為にコォヒィを用意した。
コォヒィメーカーの中でコポコポと音を立てる黒い液体を見つめ、一度大きく深呼吸する。
そうしてから浴室の方を見た。
いつも彼のペースにはまってしまう。
それがイヤな訳じゃないけど。
気が付くと自分ばかりが彼を好きなような気分。
ちぇ。





風呂から上がった彼にコォヒィを出した。
ミルクもシュガーも入れない。
窓の外、空は酷く曇ってた。
遮断された空間。
彼が笑う。
ちょっと幸せ。





特に何をするというわけでもなく。
ソファで昼寝してたり。
ピカリと空が光ってゴロゴロ音が鳴る。
雷だ。
あんまり近くないみたいだけど。
もう一度光る。ピカリ。
そしたら克朗さんが僕を抱きしめた。
どうしたのかと思って顔を覗き込む。
「雷が怖いんだ」
にっこり笑って背に腕を回してくる彼に僕はもうと言って頬を膨らませる。
「克朗さんは嘘ばっかり」
だけど自分にだけはそうやって甘えてくる克朗さんが本当は好きだ。
何よりも。
だから口ではそう言うけれど、すごく嬉しい。
こうして自分に甘える彼はいつもと違って年相応に見える。
近く感じる。
彼に愛されてる。
だから嬉しい。
それをきっと彼もわかってる。
わかってやってる。
「嘘なんてつかないよ」
「嘘」
「雷は好きじゃない」
「怖くはないでしょう?」
「怖いよ。だから雷が鳴ったら俺を抱きしめて」
「・・・・いいですよ」



彼は嘘吐き。
だけど幸せの嘘吐き。
こんな時は雨に感謝。
僕は弾けるように笑った。









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腹黒第一作目。腹黒というよりも甘えッ子のよう・・(汗)

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